室長からの案内

フランスコンペのお話

2023年09月27日

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この写真は今年4月にフランスでのコンペに出展する予定だった作品を事前に撮影したもの(一枚目は杖をテーマにした作品、二枚目は大型作品)。
フランスの会場でうまく作品を撮影できるか分からなかったので、きちんと作品の写真を残そうとtametomaさん @tametoma_inc にスタジオで撮影していただきました。




しかし、私の表現したい意図を汲み取り素晴らしい写真を撮影してくださったにも関わらず、私は出来上がったこの写真を今まで封印してしまいました。




スタジオで作品を作り終わって眺めた時に何か「違う」と感じてしまったのです。
私の表現したいことがちゃんと表現できてないと。
自分でも4ヶ月掛けて何度も何度もデザインを練り直して形にしたはずなのに、そこにあるのは会心の作品ではない気がしたのです。
小さな違和感に敏感になっていた私は立ち止まることに決めました。




そしてそこから数日でまた少し違ったデザインに変更して自分なりに納得してフランスに向かったのでした。




なのでtametomaさんには素晴らしいお仕事をしていただいたのに大変申し訳なかったのですが、この作品の写真は今まで私の記憶の奥底に仕舞い込んでいました。




そしてそれから約半年過ぎ、今日ふとこの写真を見た時に、とてもとてもこの作品が愛おしく感じることに気づきました。




当時はあまりのプレッシャーに心の余裕が一切なく焦りで満たされ、自分も植物のことも全てを信じることが怖くなっていたのかなと。
何よりも大切な植物とコミュニケーションを取れず、軽やかな二人三脚ができなかった。
だからぶれぶれな自分がいた気がします。




この作品を見た時に、必死になり視界がすっかり狭くなっていた私に、純粋に寄り添ってくれた植物たちの姿が見えて申し訳無さと有り難さに涙が出ました。




もちろんフランスで実際に出展した作品は会心のものだったのですが、時間が経ち、今改めて見たこちらの作品にはそんな当時の自分と植物が映されていて堪らなく愛おしくなったのでしょう。




こんな風に時間を越えて感じ取れるものがあることに感謝です。




何が大切なのか。
これからどこへ行くのか。
この作品はそれが時を経て少しのヒントをくれた気がします。
全てに無駄など無いのだなぁ。